コピー『昔の恋人に電話したくなる本No.1』から考えるブランディング


 

先日、日頃からよく行く書店にフラッと立ち寄ったところ、小説コーナーの最も目立つ位置に、こんなコピーで宣伝されている文庫本がありました。それが『昔の恋人に電話したくなる本No.1』という触れ込みの平山瑞穂著『あの日の僕らにさよなら』。

桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは──。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。

以上が、新潮社による小説の概要ですが、タイトルの雰囲気もよく、紹介文を読む限り、単なる恋愛小説とは一線を画し、謎めいた雰囲気も感じられて非常に興味深く感じられます。

しかし、今回取り上げたいのは小説の中身ではなく、『昔の恋人に電話したくなる本No.1』というキャッチコピーについて。ここまで具体的にシチュエーションを提示されると、いったいどんな内容なのかとつい気になってしまう。

 

『ハルキの新作です』でも売れてしまう

 


 

 

新入荷の書籍を販売する際には、この本がどんな本なのかを一言で言い表さなければなりません。そして、そのコピーは作家個人の持つブランディングによっても大きく変化してくるでしょう。

例えば2013年春に村上春樹の新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が店頭に並んだ際、多くの書店はそれについて多くを語ることなく、『村上春樹の新作』と表現するにとどめていました。そして、その内容はほとんど公にされていないのにも関わらず、多くの客が開店前の書店の入口の前に列を作り、テレビ局もその様子を大々的に報じました。そして、メディアの報道もやはり『ハルキの新作』というコピーを用いていました。

村上春樹ほどではないにしても、東野圭吾や伊坂幸太郎といった人気作家も同様の現象が起きています。彼らの新作を売るためには、ただ目立つ位置にそれらを並べ、『東野圭吾の新作入荷しました』、『伊坂幸太郎の長編小説が出ました』と言えばいいのです。

決して平山瑞穂さんを悪く言う意図ではないのですが、彼は一般の読者層に広く知れ渡っている作家さんではありません。そして、これも彼自身が述べていたことですが、『あの日の僕らにさよなら』の改題前のハードカバー作品『冥王星パーティー』は、ほとんど注目を浴びることがなかったため、こうして文庫化することも奇跡的な状況だそうです。

 

ターゲットを具体化して独自のブランディングを創るコピーを

 


 

しかし、そんな不遇な『あの日の僕らにさよなら』は『昔の恋人に電話したくなる本』という代名詞をもらい、日本中の書店の最も目立つコーナーの広大なスペースを独占しています。

ここで1つ考えてみたのですが、仮にこの本のコピーが『究極の大人の恋愛小説』だったら果たしてここまで話題になったのかどうかということ。恐らく、多くの人はそのコピーを見ても素通りするのではないでしょうか。

いくら内容がとても良かったとしても、その良さに気づくには実際に購入して読んでみなければいけません。そして、そのためには関心が引かれ、その本を手に取るというステップを踏まなければならない。この点でコピーは見込み顧客にファーストアクションを促すという非常に重要な役割を果たしているのです。

このコピーで重要なのは、とにかくターゲットを具体化している点です。単に『恋愛小説』だと、誰しもの経験とリンクする一方で、その深さがまったく足りないため、心を揺さぶることが出来ません。しかし、『昔の恋人に電話したくなる』とすることで、各々の過去の恋愛経験に直接的に訴えることができます。

また、『電話したくなる』という具体的なアクションを示す点も非常に重要です。『電話したくなる』ためには当然ながら過去に電話をしていたという経験が必要になります。そのため、このコピーを読んだ際に、各々の過去の恋愛経験が一瞬のうちにフラッシュバックし、自然と前の恋人の存在を意識せざるをえなくなるのです。つまり、受けての感情を具体化することができるのです。

そして、『No1』と示すことで、その本独自のブランディングを図ることに成功しています。もう『昔の恋人に電話したくなる本』と言えば、『あの日の僕らにさよなら』なのです。

これと同様に、松本潤さんと上野樹里さんで実写化された『陽だまりの彼女』のコピー『女子が男子に読んでほしい本 No.1』というコピーもターゲットに具体性をもたせ、独自のブランディングを創りあげることに成功しました。

現に、私も含め、当時彼女のいなかった多くの男子が女心とやらを知るためにこの本に手を伸ばしたのですから。

 

ビジネスにおけるセルフブランディングにも独自性を

 


 

個人でビジネスを行う場合も、セルフブランディング、つまり自分で自分のブランディングを行うことが重要になります。そして、セルフブランディングの本質とは別に、あらゆる言葉を用いて自分のことを紹介しなければならない場面が必ず訪れるでしょう。

その場合に、自分はその世界における村上春樹ではないということを自覚しなければなりません。つまり、自分より圧倒的に認知度や実績がある人がいる以上、その人と同じ土俵で戦ってもダメなんですよ。

例えば、村上春樹の『ノルウェイの森』は村上春樹氏本人が『100%の恋愛小説』と自評したこともあり、現在ではその言葉がそのままコピーとして使われている場合も非常に多いです。しかし、これは村上春樹だからこそ100%の恋愛小説と言い切っても問題がないわけです。

もしくは恋愛小説の分野で有名な市川拓司や片山恭一、江國香織ならベストのコピーでしょう。恋愛を描くことに長けているというブランディングを持つ彼らのベストだと言っているわけですから。

しかし、認知度が低くて、決まったブランディングがない場合、これからブランディングを構築していかなくてはならない場合は、やはり『あの日の僕らはさよなら』や『陽だまりの彼女』的なアプローチをしなければいけないと思います。

極論を言うと、これからネットビジネスを始めようとする人が、『PC1台で自由な収入源を築く男』なんて魅せ方をしても、効果がほとんどないということです。もっと具体性があって受け手の心にダイレクトに響くような表現をしなければいけません。誰でも語れる言葉で自分を表しても、同じ土俵で勝負する人が自分よりも実績も知名度も高ければ勝ち目はありませんからね。

パーソナルブランディングに興味がある方はそんなことをヒントに取り組んでみたらいかがでしょうか。

 

 

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記事公開日:2014年2月21日
最終更新日:2014年3月21日

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