USPとは |意味や広告マーケティングにおけるソーシャル時代の差別化事例・作り方を紹介します。

USP

USP(Unique Selling Proposition)とは、独自の販売提案という意味の広告マーケティング用語です。

競合他社との市場競争において、差別化を図るためには『自社商品の強み』を顧客に対してPRする必要があります。

同じような販売者が同じような商品・サービスを同じような価格帯で販売している中、お客さんに自社商品を選んでもらうためには『他社商品にない自社商品だけの強み』を訴求していかないといけません。

僕自身もマーケターとして、WEB教材やオンラインサロン、コンサルティングサポート、スクール事業など様々な商品の構想段階から携わった経験がありますが、それを踏まえて、ビジネスの実践の場における効果的なUSPの作り方を差別化の事例等を踏まえて紹介したいと思います。

USPの意味とは

USPとはUnique Selling Propositionの頭文字をとったものであり、直訳すると『独自の販売提案』となります。

つまり『自分の商品だけが持っている強み』になりますが、消費者は市場における数多の商品群の中から『これだ!』という商品を選ばなくてはいけません。

販売者側は自分の商品を選んでもらうために、他の商品にはなくて自分の商品にある強みを提案する必要があります。

そもそもUSPは1960年代にロッサー・リーブスというアメリカのコピーライターが提唱した広告理論で、日本でも彼の『USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則』という本が発売されています。

著書の中でロッサー・リーブスはUSPに対して次の基準を示しています。

  1. 広告とは顧客への提案でなければならない:単なる言葉や宣伝の羅列ではなく「この商品を買えば、こういう利益(=ベネフィット)が手に入る」という提案。
  2. 提案は独自のものでなければならない:競合他社が示せない、あるいは示さない独自の提案。
  3. 強力で強烈な提案でなければならない:数百万人もの心を動かせるほど強力な提案

これらの要素を踏まえることで、商品の提案に独自性をもたらすことができるというのがロッサー・リーブスの主張です。

なぜ広告マーケティングにおいてUSPが大事なのか

USP

USPは自分の商品をマーケットにおいて独自差別化するために必要な考え方です。

例えば、英会話スクールやスポーツジムや宅配ピザでも何でもいいのですが、今の世の中は同一の市場において、同じような内容の商品やサービスを売っている競合他社が乱立しています。

その場合は商品の中身(=スペック)で差別化をすることになるのですが、顧客は必ずしもハイスペックな商品を求めているわけではなく、自分の求めているもの以上の機能を商品に付加しても『過剰スペック』になってしまい、あまり売れなくなってしまいます。

※多機能すぎて使いこなせない電化製品を思い浮かべてください。

スペック競争が激化した果てには、顧客が必要としていないスペックはどんどん削ぎ落とされ(開発費の高騰に対して売上が落ちてしまう)、結果的には『今の市場に受け入れられる機能』の商品を提供することになるため、商品の中身で差別化をすることは非常に難しくなります。

すると、顧客は同じような中身の商品を選ぶ際には『値段』で選ぶようになります。

同じような中身の商品なら、当然ながら安い方を選ぶのは自然の摂理ですよね。

販売者側の視点に立つと、売上を伸ばすために価格を下げると、競合他社も価格をそれ以上に下げてくるので、今度はそれ以上に下げざるを得ません。

すると競合他社もそれ以上に…という価格競争に陥ってしまいますが、価格を下げれば下げるほど利益も少なくなり、それでは会社が傾いてしまいます。

そこで『価格を下げるのではなく、商品の価値を高める』ための戦略としてUSP(自分の商品だけが持つ強みの提案)が重要になるのです。

機能的ベネフィットをUSPにして他者と競合しないのか

USP

ロッサー・リーブスがUSPという概念を提唱したのは1960年代。今から50年以上も前のことです。

フィリップ・コトラーのマーケティング論によると『マーケティング1.0(製品中心のマーケティング)』の時代です。

機能の良い製品を作れば売れる時代は終わり、モノに溢れ自己実現やソーシャルな結びつきに価値を感じる人が増えた現代では、時代と共にUSPの活用の仕方もアップデートしていかないといけません。

よくUSPの事例として扱われるコピーを見てもそうです。

よく扱われるUSPの事例

例えば、ロッサー・リーブスはUSPの事例として以下のものをあげています。

口臭をストップ!(リステリン)

どうでしょうか?

めちゃくちゃ当たり前な感じがしませんか??

また、よくUSPの事例として取り扱われるのがこちらのコピーです。

熱々で新鮮なピザを30分以内にお届けします。もしできなければ代金はいただきません(ドミノピザ)

元々は小さなピザ屋さんだったドミノピザは、このUSPがキッカケに世界的大企業になったと言われています。

ただ、このリステリンとドミノピザの事例を見て、なんか違和感を感じませんか?

その違和感の正体は『別にUniqueじゃないのではないか』という点に集約されると思います。

USPとは他者が真似できないもの(自分たちだけしか約束できないもの)でなければいけませんが、ぶっちゃけ『口臭をブロック』するのも『30分以内にピザを届ける』のも、普通に競合他社でも約束しようと思えば約束できちゃいますよね。

つまり、全然ユニークでもないしパクリ放題ってことです。それでは『USPとは他社に真似できないものじゃないといけませんよー』っていう前提条件が簡単に崩壊してしまいます。

機能的価値は差別化にならない

結局のところ、ドミノピザもリステリンも謳っているベネフィットは『機能的価値』なんですよね。

機能面でのベネフィットは程度の大小の差こそあれど、基本的にはパクりパクられの世界ですし、今の時代はどの商品やサービスも機能面での差別化をするのは極めて難しいです。

また顧客心理も時代に伴い変化を繰り返し、機能面よりも体験的価値や精神性(いかに新しい世界へ連れていってくれるか、いかに社会にとって意義深いものか、いかに自己重要感を満たしてくれるか)を求めるようになっているのが今の社会です。

従って、スペックで勝負をしようとしても、それが顧客にとってのベネフィットになりづらく、独自性にも繋がりにくい。

ロッサー・リーブスの時代では通用したかもしれないUSPも、今の時代ではベネフィットが弱く他社からもパクられ放題の『機能しない似非USP』になりかねません。

それを踏まえて、時代の変化に応じてUSPもアップデートしていかなければいけないのです。

ロッサー・リーブスの主張するUSPの『浸透度』

ただ、ロッサー・リーブスはこうも言っています。

ひとつのコンセプトによって広告の浸透度を高めることができれば、競争相手の浸透度は下げられる。

言ってしまえば、『早い者勝ち』とか『規模の勝負』ということになるのですが、例えば『オンラインでファッションの買い物ができるインターネットサービス』と聞いて真っ先に思い浮かべるのは『ZOZO TOWN』だと思うんです。

いくら『ZOZO』よりも高機能で取り扱い商品数が多いサービスが立ち上がったとしても、そのイメージでZOZOを超えるのは非常に難しい。なぜならZOZOの浸透度が高すぎるから。

なので、新しくコンセプトを作るときには『浸透度』という概念を持つ必要があるし、仮に機能的価値で勝負するUSPだとしても真っ先に浸透させて『浸透度』を高め切ってしまえば、高い効果も期待できます。

いわば先手必勝、早い者勝ち。

そうすれば『○○と言えば△△』という具合で、コモディティ化しがちな機能的価値的なUSPでも独自ポジションを作れるというわけです。

ソーシャル時代におけるUSPの作り方

USP

ビジネスをする上で独自ポジションを築く重要性は非常に高く、だからこそ『USP』という概念のもつ意味も大きいのは確かです。

ただ今は『製品至上主義』的な1960年代から50年以上の月日が経ち、とうに『モノが溢れた時代』が訪れていますし、特に先進国ではスペック重視で商品を選ぶ人はどんどん少なくなりつつあります。

そして、商品のコモディティ化も進み、同じようなスペックの商品が市場に乱立するようになりました。

インターネットの発達に伴い色んな商品のスペックが瞬時に比較できるようになったし、販売者側が購入者側に対して有していた情報優位性も弱くなりつつあります。購入者も十分な情報をインターネットを通じて得ることができるようになっているわけなので。

だから、これからは機能的価値以外のところでの、他者からコピーされないUSPをいかに作り上げるかが重要になっていきます。

それでは、どのようにすれば差別化できるUSPを作ることができるか、考えていきたいと思います。

モノ消費からコト消費の時代へ

生活に必要なものは既に揃ってしまって、様々な製品が日常に溢れかえっている昨今は、『何かモノが欲しい』という欲求がどんどん薄まりつつある時代です。

以前はドラッグストアや百貨店で大量の日本製品を買い占めていた訪日外国人観光客も、近頃は日本的な体験に対してお金を支払うようになり、インバウンド需要においても『モノ消費からコト消費』という流れができつつあります。

そんな時代において『商品の機能的価値』でいくら差別化をしようとしても、そもそも顧客は『そこまで商品の機能的な違いに対して関心を示していない』わけです。

  • 知的好奇心を満たしたい
  • 非日常な体験をしたい
  • 同じ価値観の仲間と繋がりたい
  • 社会のためになるような消費をしたい

このような『目には見えない価値』を求めて消費をする人が増えている現状を踏まえて、これからはコト消費におけるベネフィットを提案していくべきです。

ストーリーで差別化する

コト消費の時代が進展していく中で生まれた1つの変化に『顧客は商品そのものが持つ機能的価値ではなく、商品や企業の持つ意味(ストーリー)に価値を感じるようになった』という点があります。

2010年代半ばから注目を集める、お菓子のスタートアップ『BAKE』という企業がありますが、インタビューにて代表取締役の長沼氏はこのように語られています。

その姿勢を、より魅力的に、分かりやすいように情報発信しなきゃいけないと思っています。だからこそ、私たちがどういうストーリーを持っていて、どんな会社なのか、何にこだわっているのかということを発信することをとても大切にしています。

単品販売でお菓子を売るって、真似しようと思えば誰でもできると思うんです。なぜ私たちがこの事業をしているのか、ということを伝えなきゃいけないと考えています。もちろん、店舗からでもそういった情報を発信できるのですが、店舗だけでは伝えられない、もう一歩踏み込んだ想いを伝えることを常に意識しています。

http://archive.pr-table.com/interview/bake/ より引用

どれだけ技術面でのコモディティ化が起こっても、誰にも真似できないモノがあるとするならば、それは『自分自身のストーリーやコアメッセージ(理念)』ではないでしょうか。

なぜ事業を立ち上げたのか、なぜこの商品を作ったのか、この商品を通じて顧客をどんな世界に連れていきたいのか、その結果として世の中がどうなっていけばいいと考えているのか。

このような『内面的な思い』を自分の言葉でしっかりと語り、顧客を巻き込んでいくことで、自分の存在を市場におけるオンリーワンなものへと昇華することが可能になります。

自分が掲げる理念に共鳴してもらう

理念とはすなわち『自らが掲げる社会の理想像』のようなものです。

例えば、BAKEの場合は『お菓子にもっと新しい価値を』というコンセプトを掲げ、日本の製菓業界の在り方や第一次産業のビジネスモデルを変革し、お菓子に関わるみんながワクワクするような新しい価値を見出していくことをミッションとして宣言しています。

また、ZOZOTOWNを運営するSTART TODAYの場合は『世界中をカッコよく、世界中を笑顔に』という企業理念を掲げています。数多のファッション業界の中でも『世の中をカッコよくするために俺たちは存在してるんだぜ?』と堂々と宣言している会社は間違いなく稀有でしょう。

この『理念』についてですが、もちろん『自分たちの希望(あるいは夢)』だけを押し出すようなエゴイスティックなものであれば、当然ながら顧客の共鳴は生まれません。

『自分たちのエゴな部分(自分に対するもの)』『顧客に対するベネフィット(顧客に対するもの)』『社会的意義や使命感(社会に対するもの)』という三法よしな理念を打ち立てることで多くの人に熱く支持される理念となります。

USP ベン図

自分たちの素直なエゴがないと、情熱を感じることができない味気ないものに。

顧客へのベネフィットがないと、わざわざ購入するキッカケのないものに。

社会的な意義や使命がないと、今の時代における人々の心に響かないものになってしまいます。

この3つのポイントを踏まえた上で自らの理念を打ち立て、その理念に共鳴してもらい、顧客を『同じ理念を叶えるための仲間』化していくことで、これからの時代の顧客欲求に刺さるセールスが可能になっていきます。(商品の購入=理念により近づくためのステップ、かつ顧客にとってベネフィットのある行為)

顧客のブランド体験をデザインする

モノ消費からコト消費へと顧客心理が変化していく中で、より『体験』に重きをおく消費者が増えるようになりました。

それは旅行や映画、音楽フェスや、グランピング、SNSで反応が取れるようなスポットや体験の需要が高まっているということもひとつです。

例えば都市型のバーベキュー施設として大きな人気を誇る、豊洲のワイルドマジックについて、そのプロデューサーの原田康弘氏はDIAMOND ONLINEのインタビュー記事にて次のように語っています。

「今のお客様たちは、特に若者達は閉塞感があるのではないでしょうか。飲食店でも様々な業態がでてきてはいるものの、それらになんとなく満足できなくなっているんです。いつの時代も、若い女性はファッションに敏感で、おしゃれな場所でお酒を飲んだり、食事をしたいと思っているのです。今はディスコでもクラブでもない、ファッション的な何かを求めてマジックビーチに来場している女の子が目立ちます」

http://diamond.jp/articles/-/58832 より引用

また、単に『体験』をコンテンツ化して販売する業種だけに止まらず、普通のBtoCの製造業においても『顧客の商品体験をいかにデザインするか』という着眼点は重要になっています。

先に紹介しているBAKEも単に商品としてのチーズタルトを売るというフェーズに止まらず、いかにBAKEのブランドを体験してもらうかを追求している企業のひとつです。

BAKEの戦略は事業構想(https://www.projectdesign.jp/)にて次のように紹介されています。

BAKEの店舗は、すべて工房一体型だ。どの店舗も、足元からガラス張りにしており、外から店内の全景が見えるようになっている。それは、お客が店舗に近づいたときに「あたかも工房に入ったかのような感覚」を与えるためだ。

「商品をたくさん並べているのも、そこで製造しているというライブ感を出すためです。売り方・見せ方・ライブ感は、美味しさを感じてもらうために大切な要素。また、看板を大きく出さないことも共通しています。『工房』なので看板が不要なのと、店の名前よりも、商品をきちんと見せたいという理由です。また、パッケージのデザインについても、ラベル一つにこだわり、商品がより魅力的に見えるようにしています。いろいろなアプローチを試みていますが、あくまで主役は商品。すべては、商品の価値を高めるためです」

BAKEは、音楽家・映像作家とのコラボも行っている。「BAKE CHEESE TART」イクスピアリ店には、天井に狭指向性スピーカーが設置され、店舗内を一歩進むごとに聴こえてくる音が変化する。さらに、それが店内のスクリーンの映像ともリンクする。

「体験型コンテンツがあることで、お客様が、チーズタルトを買うまでの時間をワクワクと楽しんで過ごせます。これも、菓子業界の常識からすると『非効率』な投資だと思います」

https://www.projectdesign.jp/201703/explosion-of-entertainment/003456.php より引用

ブランドとしての理念(=USP)は、ただ言葉にして伝えればいいのではなく、顧客に実際に体験してもらうもの。どうすれば自分の打ち立てた理念に対して、顧客に『体験』としての価値を感じてもらえるかを追求していくことが重要になります。

あらゆる手段で理想の世界を具現化する

これまでのマーケティングでは、テレビCMや街頭広告などのマスマーケティングや大衆向けのインターネット広告が主流だったこともあり、USPを作る際の流れとして『自分たちの独自性を洗い出したら、今度はそれを顧客に伝わるように言語化しよう』という手順が解説されてきました。

しかし、今のソーシャルな時代では『広告』の在り方も劇的に変わってきています。

消費者がInstagramなどのSNSやYouTube、ブログなどのWEBメディアを通じて商品の感想やレビューをお手軽に発信できるようになったし、何か購入したい商品やサービスを検討する際には『とりあえずインスタで調べてみる』という人もたくさんいます。(旅行先や結婚式場やバーベキュー場やファッションなど)

だから『USPを文章で言語化すればいい』というだけでは不十分で、ビジュアルイメージやWEBサイトのデザイン、音楽や匂いのような五感に響くマーケティング、あるいは顧客自身にまでUSPを反映させていくべきと言えます。

時代がソーシャル化するにつれ、消費者が商品と出会うまでのルートは細分化され、商品に対して求めるポイントも自由自在に変化し続けるものです。

それを踏まえた上で、Unique Selling Propositionをあらゆるフェーズにおいてあらゆる手法で具現化するべきです。

最後に

マーケットにおいて他社商品と独自差別化をするために『USP(Unique Selling Proposition)』を打ち立てることは、今も昔も非常に重要です。

しかし、時代は刻々と変化をしているわけですから、それを踏まえた上でUSPを考え、時代にあった消費者への届かせ方をデザインしていくべきです。

残念ながら、インターネット上に転がっているUSPの記事の多くは、コトラーで言うところの『マーケティング1.0(製品中心のマーケティング)』を前提にしたものばかりですが、『モノ消費からコト消費』という時代の変化を前提にした『理念と体験ありきのUSP』を表現していくことが、これからは重要になっていきます。

ぜひ、この記事がご自身のビジネスのお役に立てていただけるなら幸いです。