機能的価値と情緒的(感情的)価値とは|意味やブランド価値を高める具体例を解説

ブランディングのロゴ

機能的価値情緒的価値感情的価値)というマーケティング用語がありますが、これらの概念はセルフブランディングを行う上で非常に重要です。

特に日本人の間では、長らく製造業が好調で「良いものを作れば売れる」という技術大国ニッポン的な神話の中で生きてきたため、商品やサービスの価値を高めようとする際には「機能的価値」に視点が向かいがちです。

ただ、今の時代はコモディティ化が進んでいることで「顧客にとって良いものは誰でも作れる」という状態になってしまったため、機能的価値では差別化ができず、情緒的(感情的)価値で差別化をする必要性が生じています。

また、売れるセールスマンと売れないセールスマンで比較した際にも、やはり情緒的価値と機能的価値の使い方で「差」が生まれてしまっています。

今回の記事では、機能的価値と情緒的価値それぞれの意味や、ブランド価値を高めて売上を伸ばしていく際に活用するための具体例を紹介していきます。

機能的価値の意味とは

機能的価値とはその名の通り「機能面における価値」でスペックという言葉でも言い換えられます。

例えば、ノートパソコンにおける機能的価値を考えてみましょう。

液晶サイズ、CPU、メモリ容量、重さ…といったものが機能的価値に当たりますよね。

また、市場に評価されるという意味で就職活動を例に出してみると、出身大学、WEBテストの成績、TOEICの点数、所属していた部活動での成績などが、機能的価値になり得るでしょう。

このように「機能的価値」とは、客観性の強い事実であり、かつ数値化しやすいものである傾向が強く、誰がみても価値を感じやすいものという特徴があります。

情緒的(感情的)価値の意味とは

情緒的(感情的)価値とは、受け手の感情面に訴えかける価値のことを言います。

「カッコいい」「可愛い」とか「憧れる」とか「共感できる」とか「なんか理由はわからないけど感動する」とか。

例えば、歌が上手い(客観的強み)ミュージシャンが必ずしも売れるかというそうではないですよね。例えば、パンクロックのアイコンとして知られているシド・ヴィシャスは、演奏のレベルで言えばそもそもピストルズ加入時では素人だったため下手中の下手なわけですが、彼の生き様は多くの人から崇拝されています。

また、ノートパソコンやガジェットを例に出すと、Apple製品の愛好家は多いですが、彼らの多くはiPhoneやMacbookのスペック面に惹かれているというわけではなく、デザインだったりブランドのストーリーだったり、精神性に魅了されている人が多いのではないでしょうか。

このように「感情的価値」とは、主観性の強い偶像であり、数値性や客観性のない、個々人によって感じ方が違うものという特徴があります。

機能的価値では差別化が難しくなっている理由

技術への信仰心が強い日本人的な発想では「技術の質を高めて良い商品やサービスを生み出せば売れる」と考えられがちですが、そのような機能的価値だけではライバルと差別化することが非常に難しくなってきています。

技術格差と情報格差が小さくなっている

グローバル化やIT化が進んだことで「高性能な商品を作る」ことへの技術面およびコスト面でのハードルが低くなって、世界中における技術格差が小さくなりました。

つまり、誰でも高性能な商品を作れるコモディティ化が進むことになるのですが、どの企業も作る商品が同じなら「値段」で差別化をするしかなくなり、価格競争を余儀無くされてしまいます。その結果、高く商品を売れないのであれば、市場を広げない限りは企業利益は減少してしまいますよね。

また「情報」という面でも同じです。

今やGoogle検索を使えば、世界中のあらゆる情報を入手できるわけです。「情報を持っている」ことの強みは時代が進むにつれて、どんどん小さくなっていくと考えられます。

一定の水準を超えると顧客にとってオーバースペックとなる

また、機能を良くすれば無条件で「良い商品」になるのかというと、必ずしもそういうわけではありません。

例えば、電話とメールだけできればいいという人には、高機能なスマートフォンは必要ないでしょうし、冷蔵庫や炊飯器など今の白物家電は機能が多すぎて使いこなせないという人も多いでしょう。

そういう人にとっては、値段が高くて高機能な商品よりも、値段が安くて低機能な商品の方が「良い商品」ということになります。

一時期、あらゆる家電メーカーが3Dテレビをリリースしましたが、あれも顧客が求めていない機能を推進して失敗した例です。

機能的価値を高めようとしすぎても、一定の水準を超えると顧客にとってオーバースペックな商品になってしまうという事実も忘れるべきではありません。

コトラーのマーケティング論から考えてみよう!

経営学者のフィリップ・コトラーはマーケティングの概念を定義し続け、これまでに「1.0→2.0→3.0→4.0」と時代に合わせて、理想的なマーケティングの定義をアップデートし続けてきました。

簡単に解説すると、

  • 1.0:製品中心:良い商品を作ってマス向けに広告を打てば売れる
  • 2.0:消費者中心:消費者の感情に訴えかけるマーケティングが必要
  • 3.0:人間中心:世界をより良い場所にすることがマーケティングの目的
  • 4.0:自己実現中心:消費者の自己実現に貢献できるマーケティング施策

となるわけですが「機能的価値」だけで差別化をしようとするのは、遥か昔に終わりを告げた「1.0」の時代の考え方なわけです。

いかにして、消費者の感情に訴えかけるかはもちろん、その先の「社会貢献」だったり「消費者の自己実現にいかに貢献できるか」という視点に、これからはもっと重きを置かないといけないですね。

人間は感情で決断し理屈で納得する生き物

人間が何か決断をする時に、最も決断内容に影響を及ぼすのは「感情」であると言われています。

例えば、こんな経験はないですか?

買い物の決断に迷う男女

ショッピングに行って、たまたま目にした洋服に一目惚れをした後で、

  • 5年も着れば元が取れるから
  • 今持っている洋服はそろそろ似合わなくなってきたから
  • これからの季節で一着あると便利だから
  • ちょうど今セールになっていてお得だから

といったように、この商品を買ったほうがいい理由を頭の中で色々と考えたり口に出したりしてみる。

これは、もう心では買うことが決定しているんだけど、頭の中で自分の決断が正当化できる理由をいくつも挙げ連ねているという状態です。

つまり人はまず最初に「感情」で判断して、その後に「理屈」で納得するということ。

これを考えると、まずは感情を動かすということがどれだけ重要かわかっていただけるはずです。

機能的価値と感情的価値をビジネスで活用するための具体例

機能的価値は認知のキッカケになる

ブランディングで差別化を図るためには情緒的(感情的)価値にフォーカスすべきだという話をお伝えしてきていますが、機能的価値は必要ないかというと、そういう問題ではありません。機能的価値は機能的価値で超重要です。

情緒的価値と機能的価値

顧客にとって差別化のポイントになるのは情緒的価値ですが、このように機能的価値は顧客にとって、あって当たり前の「前提」になる部分であるためです。従って機能的価値がないという場合は、顧客にとって検討の選択肢から外れてしまうことになります。

そして、重要な点ですが機能的価値は認知のキッカケになります。

マーケティングファネル

こちらは「マーケティングファネル」という、顧客が商品の存在を認知してから購入に至るまでの流れを図式化したものですが、そもそも自分の必要としている機能を有していなければ、なかなか対象の商品と出会うことってできないはずです。

参考:マーケティングファネルとは|事例と図解で初心者にもわかりやすく解説!

従って「機能的価値を疎かにしていい」というわけではないので、そこは勘違いをしてはいけません。

感情的価値は「顧客の未来」を魅せる

人の感情が動く時の代表的なシチュエーションとして「理想の未来の実現を鮮明にイメージできた瞬間」が挙げられます。

この商品やサービスを手に入れて価値を受け取った結果、どんな未来が待っているのかどんな自分になれるのか、それが感じられることで見込み客の感情は動き、成約へと繋がっていきます。

例えば、大学受験予備校の広告には「合格者の声」が笑顔の顔写真付きで載っていたり、ダイエット商材のセールスレターにはモニターのビフォーアフターが画像付きで載っていますよね。

またラグジュアリーブランドは店内にいるだけで洗練された気持ちになったり、非常に気持ちの良い接客を受けることができますが、そうすることで見込み客は「このブランドの商品を買う事で自分の価値を高めることができる」と実感することができます。

このように、セールスコピーから店舗マネジメントなど至る所で、顧客にとって理想的な未来を実感してもらえるような購入プロセスを踏んでもらうことは効果的です。

自分のストーリーや理念に共感してもらう

映画やドラマが好きな人が多いことからもわかるように、人はストーリーに共感・熱狂しやすい生き物です。

それと同様に、最近では「購入=その企業を応援する意思表示」と定義する消費者も増えてきているので、自社(or 自分 or 商品)のストーリーに共感してもらうためのアプローチを欠かさないようにするといいですね。

例えば、ZOZOは「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を」という企業理念を掲げていて、その理念に沿った情報発信や経営戦略をされていますが、ZOZOを支持する人の中には「世界中をカッコよく世界中に笑顔を」という理念を実現するための一員になりたいと考えている人も少なくないはずです。

それに、ストーリーや理念というものは、絶対に他者から真似されないものです。

絶対不可侵なブランドを構築するという意味でも、ストーリーや理念というものの持つ役割は非常に大きいと言えますね。

ブランドが好きな自分が好きという状態が最強

特定のブランドに対するファン化が進めば「自分の好きなブランドと繋がっている自分が好き」という状態になりますが、それこそが最強のブランディングではないかと僕は考えています。

例えば、一時期は意識高い系の象徴として「スタバでマック」という標語が揶揄されましたが、彼らは「スターバックス店内でMacbookを使い仕事をしている自分」のことが好きだと捉えることもできますよね。

消費者の自己承認欲、あるいは自己実現欲求を満たしてあげて「自分自身のことを好きになる」ための重要なピースになることができれば、消費者にとって絶対的な存在になることができます。

そのため、どうすれば自分たちのブランドが顧客の自己実現や自己承認に貢献できるかという点も考えて、ブランド構築に取り組んでいけるといいですね。

機能的価値を情緒的価値に変換することができる

機能的価値自体は差別化の要因になりにくいと言いましたが、機能的価値の高さを生かして情緒的価値を構築することは可能です。

例えば、ルイヴィトンのカバンは品質が良い(機能的価値が高い)事で有名ですが、「ルイヴィトンの顧客=上質なものにこだわる洗練された大人」という感情的価値へと変換してあげれば、機能が心をときめかせるようになります。

あとはそこに「タイタニック号の海難事故の際に、ルイヴィトンの旅行カバンは水に浮いて、多くの顧客が助かった」という伝説的なストーリーも加わったりすることで、機能的価値が感情的価値に見事に結びつきますよね。

機能的価値が機能的価値のままなら差別化要因にはなりにくいですが、その機能性の高さを感情的価値向上のために役立てられないかと考えることで、新たな価値の創出に繋がっていきます。