『西郷どん』1話2話の感想と『人を動かすコピーライティングと神話の法則』を考える

西郷どん,感想

鈴木亮平が西郷隆盛の生涯を演じ、豪華キャストが集結したことや薩摩弁が『ちょっと何言ってるかわからない』ことでも話題の大河ドラマ『西郷どん』。

1話と2話をリアルタイムで見たのですが、個人的には普通におもしろく見ることができました。

そもそも『幕末』って、どこを切り取っても素材の味がめちゃくちゃ良いじゃないですか。

だから本当に余計なことをしないで普通に描いてくれれば無条件で面白くなるのが『幕末モノ』なのですが、『花燃ゆ』の一件もあったし誰もが知る大スターが主役ということもあり、なんとなく『本当に大丈夫なのか…?』と緊張感を持って見た人も多かったのではないかなと。

でも蓋を開けてみたら普通に面白かったし、それにこうした大河ドラマってすごくビジネスの勉強になるんです。

特にコピーライティングとかストーリーテリング(ストーリーを語りながら『理念』を伝えて顧客を巻き込んでいく技法)の分野においては。

そういうわけで、僕の主催しているビジネスサロンのオンラインコミュティの方に、『西郷どん的ストーリーテリング(光と闇とメンターと使命)』というコラムを投稿したら、コンサルメンバーのゆきてるさんがこんなツイートを…。

『これはもうサロンという限定的な場所ではなく、表の舞台で書かねば!』という気持ちが燃え上がってきたので、その完全版を記事にしたいと思います。

なお、あくまで『コピーライティング(セールスライティング)』や『ストーリーテリング』の考え方を主題とするので、歴史的解釈についてはゆるゆるな部分が多くなることをあらかじめご理解ください。

その代わり、あんまり歴史とか詳しくない人でもご理解いただけるように頑張ります。

西郷どん1話と2話の感想〜上司の命令と理念の板挟み〜

大河ドラマ『西郷どん』はみなさんご存知、幕末の英雄である西郷隆盛(演じるのは鈴木亮平)の生涯を描くドラマですが、第1話は西郷隆盛の少年時代を。第2話では下っ端の駆け出し下級武士時代のエピソードが描かれていました。(というか、ここから3月くらいまでは下っ端時代が続くと予想)

2話では、薩摩藩の下っ端藩士だった若き西郷青年は『田舎の農村の年貢(税金)の管理や監督や督促をする』という業務を上司についてこなしていました。

今も昔も地方の財政を支えるのは『税収』です。

特にこの時代は今のように『日本』や『首都』という概念もなく、一つの藩が『国』と認識される時代だったので、基本的に『藩のことは藩で何とかしてね』という時代でした。

そのため藩を潤すためには『税収』を安定的に高水準で得るのが基本でした。(ただ、薩摩藩は調所広郷が独自ルートで琉球と商売を行い、藩の財政を急激に立て直しているのですが…)

そんな中で西郷青年は一つの問題にぶつかります。

それは『できるだけ多くの税金を徴収して藩の国力を高めたい』という藩政府と、『税金が高すぎて苦しい暮らしを強いられてて、このままじゃマジでヤバイ』という農民の板挟みにあってしまいます。

西郷はお殿さまの命で藩に仕える藩士なので、藩のために身を粉にして働かなくてはいけません。

しかし、『民は藩にとっての守るべき宝』という意見を持つ西郷は、藩が強いる税制によって民が苦しんでいる姿を無視できないわけです。

西郷隆盛がメンター島津斉彬によって見つけだした使命

この時代の普通の武士(=公務員)だったら、『上司の言うことは絶対』なわけだから、民が苦しもうがどうしようが、自分が与えられた仕事を淡々とこなすものでしょう。

しかし、西郷青年は違います。

彼は第1話にて、ストーリーテリング上、彼の『メンター』にあたる『島津斉彬』に出会います。(最終的に薩摩藩の藩主になって、下級武士だった西郷隆盛や大久保利通を重用する人。演じてるのは渡辺謙)

1話では、西郷隆盛の少年時代が描かれていますが、家族や薩摩を守る強い武士を目指して稽古に励む西郷少年は、隣村の少年とのケンカの末、二度と刀を降ることのできないレベルの大怪我をしてしまいます。

その結果、西郷少年は『もう俺の人生終わりや…』と闇落ちをしてしまうのですが、そんな状況から『闇から光へ』と誘ってくれたのが、メンターである島津斉彬です。

島津斉彬は『もう刀を持つことができない』と嘆く西郷少年に対し、『これからは武力ではなく、弱き者に親身になり、弱き者に尽くせる男が成功するんだよ』と教えを説き、西郷はその言葉を心の拠り所にするようになるのです。(劇中では、島津斉彬はその時は薩摩にいなくて、それは西郷が見た幻影かもね、みたいな感じで補足されてます)

そして迎えた第2話では、西郷青年は少年期に受けたメンターからの訓示に沿って、弱き者(=厳しい税率に悩む農民)の味方になろうとします。

特に借金のカタに身売りをさせられかけている少女の『ふきちゃん』を守ろうと、あの手この手を使って奔走するのですが、その努力もむなしく、ふきちゃんは最終的に身売りされてしまいます。

最後にふきちゃんは言うのです。『私が売られることで家族を守れるのなら仕方がない。立派なお侍さんに出会えてよかった』と。(ここで涙腺崩壊です)

『弱き者の支えになる』という使命を持つことで、西郷は『生きる意味』を取り戻しました。

しかし、実際には自分の無力さ(というか藩制度における個人の無力さ)もあって、『この子を守ろう』と決意した女の子を守ることができなかった。そんな自分の無力さや少女の居た堪れなさに西郷は嗚咽を漏らして2話の放送は終了します。

西郷どん的『神話の法則』

古今東西、人の心を魅了するあらゆるストーリーには決まった法則のようなものがあって、それを『神話の法則』と呼び、神話の法則に沿ってストーリーを書くと大体いい感じになると言われています。(今度これの記事も書きます)

ここで紹介すると話が長くなってしまうので割愛しますが、『西郷どん』のこれまでのストーリーの流れを抽象化するとこんな感じになります。

  • 日常世界:強い武士を目指して剣術に励む日々
  • 日常から闇落ち(冒険への誘い):怪我をして二度と刀を持つことができなくなる
  • 闇落ちと冒険への拒絶:今まで持っていた『生きる意味』を神(運命)に否定される
  • 賢者(メンター)との出会い:島津斉彬(and 岩山糸)との出会い
  • 第一関門突破:新しい使命(弱き者の支えになること)を見つける

ちなみに『岩山糸』というのは黒木華が演じる、西郷の3番目の奥さんになる予定の女性です。

糸は第1話にて『女性でもみんなと共に学んだり稽古に励みたいのに…』と漏らし、西郷少年は『女性がこんなに生きづらい世の中だったなんて…』という学びを得ます。つまり糸は西郷にとって最初の『支えになるべき弱き者』だったのです。

また神話の法則(人が何かを成し遂げるストーリーの鉄則)において『第一関門突破』という項目がありますが、もちろんその中で主人公はアッサリと関門を突破するわけでもなく、現実の厳しさを叩きつけられたり挫折をしたりします。

その挫折感こそ『ふきちゃんを救えなかった』2話のエピソードなのですが、新たな使命をどのように西郷が昇華させていくのか、今後が本当に楽しみです。

『西郷どん』の今後の予想と『無血開城』や『西南戦争』の理由

西郷隆盛の生涯において最も重要な功績と言われているのは『江戸城の無血開城』です。

当時、薩摩や長州をはじめとする新政府軍とそれに争う徳川家を中心とした旧幕府軍は京都で戦争の火蓋を切ります。(有名な戊辰戦争です)

そこで新政府軍が大勝利を収めると、旧幕府軍(というか総大将の徳川慶喜)は船で京都から江戸に戻り、江戸城にて立て直しを図ります。

このままいくと江戸で次なる戦争が起こってしまうのは必然なのですが、そうなると江戸の町が焼け野原になってしまいます。

こんな状況にて、新政府軍の代表である西郷隆盛と旧幕府軍の代表である勝海舟は『旧幕府軍の持ち物であり徳川将軍の象徴である江戸城を明け渡すから、江戸の町で戦争するのは辞めようね!』という契約を交わすわけです。(事実上の新政府軍の不戦勝というわけです)

江戸城の無血開城によって、江戸の都市機能が保持されたまま実権だけが旧幕府から新政府に移ったからスムーズに明治維新が進んだとか、国内での戦争で国力を疲弊しなかったから明治維新後も諸外国と対等に渡り合える力を蓄えられたとか言われています。

だから西郷をはじめとする新政府軍は無血開城で納得したというのが幕末史の定説ですが、大河ドラマ『西郷どん』を神話の法則的に考えると、そのような政治的意図もありますが『無血開城=多くの弱者の命を救った』という着眼点で描かれるんじゃないかと思います。

生きる意味を失っていた西郷は『弱き者の支えとして生きる』という新たな使命によって、再び生きる意味を取り戻しました。

西郷は使命によって生かされたのです。

しかし『弱き者の支えになる』という使命が生きる支えとなった西郷ですが、現実には一人の女の子を救うことができず、身売りされていく様をその目に焼き付けることになりました。

だから最終的には、この2話の伏線回収として、多くの弱き者を救うことになる江戸城無血開城を『西郷が使命を全うするイベント』として定義するんじゃないかと。

しかしながら、明治維新後の新政府では西郷は自らのお役目や使命を発揮する場を失ってしまい、時代の急激な変化(廃刀令、武士の否定)によって『新たな弱者』となってしまった武士たちを救うために西南戦争を起こし、使命とお役目と共に命を散らす…。

こんな感じで『弱き者の支えになるという使命』を軸にしたストーリーが進むと、非常に胸を打つ印象的な作品になるのではないかなと思います。

神話の法則における『メンター』と西郷どんにおける役割

指導者とか師匠という意味で用いられる『メンター』という言葉ですが、神話の法則においてメンターとは『新しい世界へ導いてくれる人』の意味で使われています。

『新しい世界』というのは物理的な場所だけでなく、新しい常識を与えてくれたとか新しい使命を授けてくれたとか、精神的な意味での抽象的な『世界』も含まれています。

島津斉彬は西郷隆盛の才能を見出し、彼に新しい『使命』を与えたという点で、やはり『メンター』と呼ぶに相応しい人物です。

また岩山糸もそれに当てはまります。彼女は本来は男子しか参加できないイベントに参加し『女がこんなところに来るな』と大バッシングを受けます。そして『女は学問も剣術も学べない。男と比べても明らかにやりたいことを自由にやれない』ことを西郷は肌で学び、『弱き者の支えになる』という使命に臨場感が加わるのです。

臨場感のない使命は、いわゆる机上の空論的で、人を実際に動かすものではないことを思うと、岩山糸も『西郷に使命を与えた』という点で『メンター』と言っても差し支えないでしょう。

またこれから『西郷どん』には、彼を江戸に誘うことであろう篤姫や、彼に新しい概念を次から次へと与え続けるであろう坂本龍馬という、数々もの『メンター候補』の登場が控えています。

どんな人と出会い、どのようにして西郷の世界が広がっていくのか。そんな視点で『出会いの大河』を楽しむのも非常に学びにあふれていてオススメです。

光と闇と使命とメンター

人の胸を打つストーリーを書くためには『闇から光への変化』を鮮烈に描く必要があります。それはコピーライティングでも同じです。

コピーライティングとは要するに人の心を動かす文章のことを言いますが、多くのコピーライターは『光』にばかりフォーカスして、その裏側にある闇の描写がイマイチだったりします。あるいは『闇から光への変化』がすごく雑だったり…。

でも人が心を動かすのは、光そのものでも闇そのものでもなく、『闇から光へとどう変化をしたのか』のプロセスではないでしょうか。

特に日本人は結論先行型の欧米的ライティングよりも、その結論へ至るプロセスに情緒を感じ親しむ民族ですから、プロセス(変化)をどう魅力的に魅せるのかという視点は非常に大事になります。

そして『闇から光へ』のプロセスを描く上で重要になるのが『メンター』と『使命(理念)』です。

闇落ちしていた人が光の世界へ舞い戻るのってすごくエネルギーがいることだし、普通に考えたら『ありえない』ような奇跡的な現象なわけです。

そんな奇跡が何もない状態でひとりでに気づいたら起こっていたなんて不自然極まりありません。

『人は一人では生きていけない』というこの世界のルールに沿っても『闇から光へと連れ出してくれるメンター』の存在はストーリーに必要不可欠です。僕らの人生もそうですよね。自分の力だけで劇的に何かが変わることってそうそうなくて、だいたい『誰かの導き』によって人生って変わってくものです。

あと、『闇から光へ』という奇跡的な状況変化が起きる以上、その結果として、今までは気づけていなかった『使命』や『理念』や『お役目』のような概念を手にしてるのが自然です。

それは逆にいうと、自らの『理念(あるいは使命でもお役目でも)』を考えるときは、闇から光へと変化した過去を紐解いて、『あの時のあの経験によって、自分の常識やパラダイムはどう変わったんだろう?』と掘り下げていくといいですね。

商品を売ったりファンを作るライティングをするためには『理念』が必要なことをわかってる人は多いですが、大半の人がそこから間違ったアプローチをしがちです。

多くの人たちは『こんなことを言えたら面白いだろうな〜』と自分の外部に視点を当てたり、『こうなれたら良いよな〜』と未来にばかりフォーカスをしますが、使命や理念を見つけるために大事なことは『自分の過去(特に闇から光へ抜け出した経験)』をどんどん掘り下げたり、人生の棚卸をしてあげることです。

自分が成し遂げる使命や伝えたい理念(=未来)は、自分の過去から創出されるものである方が自然だし、情報に対するリテラシーが高い層と低い層が明確に分かれてきつつある現代の世の中では、『発信してる言葉がリアルかどうか』ってめちゃくちゃ大事になってきますから。

リアルじゃないものに人の心は動かないし、それで動いた人を引き寄せても良いビジネスには繋がりません。

人生が変わる瞬間は『闇から光へ抜け出す瞬間』を描き、そこには『メンターの存在』と『新たな使命の再発見』がある。

そういう視点であらゆるストーリーを紐解いていけば映画やドラマやマンガの楽しみ方も変わってきますし、そんな意識でコピーやストーリーを書いていくと、かなり反応が取れて面白い文章になりますので、ぜひお試しください。