どんな業種のビジネスでも大きな成果を安定的に出し続けるためには「LTV(ライフタイムバリュー)」という考え方をマスターする必要があります。
特にフリーランスや個人で活動している起業家、零細〜中小規模の商店などは、LTVの高いビジネスを意識することで経営上のリスクを大幅に回避することができますし、長く顧客から愛されるビジネスを展開することができます。
LTVを高めることのメリットは、ただ単に売上が増えるだけではなく、良い人間関係に恵まれるようになったり、売上のために魂を売り飛ばさなくても済むようになるなど、精神衛生的に幸福度の高いビジネスが展開できるという点にもあります。
僕はインターネットを使ったマーケティングや情報発信を5年以上継続的に実践して、毎年売上を伸ばすことができていますし、僕がコンサルで入っている事業についても同じことが言えますが、その最大の要因は「LTVの高い情報発信ビジネス」を展開できているからだと思っています。
最近では、同業者のコンサルタントの方からも「LTVの高いビジネスの作り方をイチから学びたい」とコンサルティング依頼がくることも珍しくなくなりましたが、今回はそのエッセンスを「スモールビジネス実践者」の方に役立つように内容を絞ってお話をしていきます。ぜひ参考にしてください。
LTV(ライフタイムバリュー)とは
まずはLTV(ライフタイムバリュー)の意味や計算方法からお話ししていきます。
LTV(ライフタイムバリュー)の意味
LTV(ライフタイムバリュー)は日本語訳すると「顧客生涯価値」という意味になります。つまり、1人の顧客から生涯に渡って得られる利益がLTVです。
わかりやすく例を出してみましょう。
僕は一時期とあるヘッドスパに通っていて、毎回1万円のコースを受けていましたが、他のお店に興味を持ったため、3回通った段階でそこに通うのを辞めてしまいました。
この場合、僕という顧客からヘッドスパが受け取った売上は「1万円 × 3回」で3万円になりますよね。(もし、また通い出すことがあれば更に増加しますが)
ただ、人それぞれリピートする回数は異なりますし、もし複数の値段帯の商品がある場合、どの値段の商品を購入するかは人それぞれ(あるいは同じ人でも状況次第で)変わりますよね。
同じ美容院に何年も通い続ける人もいれば、初回割引目当てで定着しない人もいます。またカットだけの時は単価も下がりますが、カラーやパーマも合わせて注文があった時は単価も上がります。
それを踏まえて、LTVは次のように計算をして導きだします。
LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法
LTVの計算式はいくつもありますが、最もシンプルにわかりやすく示すと以下になります。
1人あたりの顧客が生涯のうちにもたらしてくれる利益を導き出すには、全体の単価の平均値と全体の購入回数(リピート回数)の平均値を掛け合わせてあげた上で、利益率を掛けてあげるといいですね。
LTVが高ければ高いほど、1人あたりの顧客がもたらしてくれる利益が高いということになるので、質の高いビジネスが構築できていることになります。(顧客に価値提供ができていなければ、顧客単価もリピート率も上がりにくいので)
また全体のビジネスの成果がわかっている状態で、LTVを導き出そうと思ったら
という式で導き出せますね。例えば、総利益が3000万円で総顧客数が500人なら、LTVは6万円になります。
スモールビジネスでLTVが特に重要な理由
LTVを高めることはどの業態のビジネスでも重要ですが、特にスモールビジネスを実践している人(企業)は、いかにしてLTVを高めるかを徹底的に追求することで、ビジネスの長期的な成功につながりやすくなります。その理由や重要性を解説していきます。
ビジネス全体の売上の算出方法
そもそもビジネス全体の成果はどのように算出されるのでしょうか。
となります。
つまり、集客をしっかり行い、LTV(1人あたりから得られる利益の総額)を高めていけば、自ずとビジネスは上手くいくことになります。これだけでもLTVを高めるメリットがいかに大きいか、ご理解いただけるはずです。
顧客数を増やすよりもLTVを上げる方が楽
あらゆるビジネスに言えることですが、集客で困っている人は非常に多いです。むしろ「いない」と言っても良いかもしれません。
僕個人的な意見を言うと、新規の集客数を増やすよりも、LTVを高めていく方がビジネスの初期段階ではラクで効率的です。
それに「LTVが低い」ということは、
- 顧客満足度が低いビジネスになってしまっている
- ビジネスの仕組みに勿体無い点が多々ある
ということになってしまいます。そんな状態で新規顧客を増やしても、満足度が下がってしまい、あなたのビジネスモデルから離脱されてしまうだけです。そして、一度離脱された顧客にもう一度振り返ってもらうのは至難の業です。
まずは、しっかりとしたビジネスの仕組みを作り、価値提供のレベルを高めた上で、新規の顧客をどんどん集めてくる方がいいですね。新規の見込み客数にも現実的に上限がありますし、特に日本は「口コミと紹介」という文化が根強い国ですから。
数ではなく質のマーケティングを目指すべき
小規模なビジネスを実践していく場合、大衆をターゲットにしたマスマーケティングよりも、特定の個人との間の関係性を大事にする「ダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM)」の有効性が高まります。(インターネットマーケティングが普遍化するこれからの時代は特に)
「とにかくたくさん顧客をとってガンガン売るぞ!」みたいな薄利多売のスタイルは、資本力と経営体力のある大手の得意とするところで、個人が小規模なビジネスで長く成功していくためには、高単価でリピート率の高いビジネスをやっていくのが一番です。間違いなく。
例えるなら、一皿100円の回転寿司か、腕を磨きまくって最低顧客単価1万円のカウンター10席の寿司屋か、どちらを選ぶかということです。
LTVが上がれば新規顧客数も増えやすくなる
またLTVが上がれば新規顧客も集まりやすくなります。なぜなら
- LTVが高い=顧客満足度が高く、ビジネスの仕組み作りが上手い証拠
- 日本は口コミと紹介が強い社会
だからです。
日本では最強の営業は「口コミと紹介」だと言われていて、1人の顧客の背後には100人の濃い見込み顧客がいるというのは有名な話です。
LTVが高いビジネスができれば、自ずと1人の顧客の満足度やリピート率が上がりやすいですし、そうなれば顧客はより濃いファンへと属性が変わっていき、その果てには「商品の拡散者」になってくれる可能性が非常に高まります。
参考:マーケティングファネルとは|事例と図解で初心者にもわかりやすく解説!
LTV(ライフタイムバリュー)の高め方
特に個人のようなスモール規模でビジネスを進めていく上で重要になるLTV(ライフタイムバリュー)ですが、その計算式は「LTV=平均顧客単価 × 平均購買回数 × 利益率」で決まると前述しました。
したがって、LTVを高めようと思ったら、
- リピート率(継続率)を増やす
- 顧客単価を上げる
- 利益率を高める
といったアプローチをとっていく必要があります。
リピート率を増やす
1人の顧客の購買回数が多ければ多いほど、LTVも高くなりますが、そのための代表的な施策として以下のものが上げられます。
バックエンド商品を用意する
もし既存の顧客に対して「次の商品」を用意していないなら、購入後に提案するバックエンド商品を用意してあげましょう。
参考:フロントエンドとバックエンドとは|利益を最大化させる商品マーケティング戦略の基礎
顧客に対して同じ商品を繰り返し提案するのではなく、常に「その先」を感じさせるような「既存商品の購入」を前提にした新しい商品を提案した方が反応が高まるケースが多いです。
商品ではなく理念で訴求していく
最初から「商品を買ってもらうこと」にフォーカスしすぎるのではなく、顧客との間に「共通の理念(理想の未来)」を作ってあげましょう。その上で、個々の商品は「理想を実現するための手段」として定義してあげると良いです。
どうしても「商品を売る」ことが目的になってしまうと、顧客はその商品を購入して手にした時点で満足した段階で、離脱しやすくなってしまいます。「商品を売るのではなく理念で売る」というスタンスでビジネスを進めていくと、顧客との関係性も確実に変わっていきます。
参考:情報発信とはライフスタイル提案型の『理想の未来』を売るビジネス。
機能的価値に加えて感情的価値を高める
もし顧客があなたの機能面(スペック)にしか魅力を感じていなければ、機能的な価値を享受した段階で、あなたの存在はお払い箱になりかねません。
しかし感情面で魅力を感じてもらえれば(「好き」とか「一緒にいたいと思う」とか)、あなたの商品を購入するだけで、あるいはあなたの考え方に触れるだけで価値を感じてもらえるようになるので、必然的にリピート率も高まっていきます。感情的価値の高め方については以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:機能的価値と情緒的(感情的)価値とは|意味やブランド価値を高める具体例を解説
コミュニティを作る
人は帰属意識を感じる対象に高く価値を感じますし、特に今の時代では「場所に参加する」ことの価値が高まっているため、顧客同士や顧客とブランド(販売者)が繋がりを感じられるようなコミュニティを作ることは効果的です。
商品に満足しているだけの状態と、「この環境が好き」と思ってもらえているような状態では、後者の方が満足度も高まりやすく、リピートを前向きに検討してもらえる材料も増えます。
リアルでイベントを開催してもいいですし、オンライン上で繋がりを感じられるような試み(ウェブセミナー、Skypeやチャットワークなどのコミュニティ、Facebookの非公開グループなど)を施すのも良いですね。
顧客単価を上げる
リピート率を増やすほかにも顧客単価を上げることで、LTVの向上が期待できます。そのための代表的な施策は次の通りです。
値段を上げる
単純に今販売している商品の値上げをすれば、顧客単価も簡単に上げることができます。
特に個人でビジネスをやっている場合は「価格競争に巻き込まれないこと」が重要ですが、できるだけ高単価で商品を販売できるに越したことはありません。(その方が顧客満足度も上がりやすいですし、顧客の質もよくなります)
もちろん、顧客が支払えないレベルまで値段を上げると売上は落ちてしまいますし、不当な値段で商売をしていたらクレーム騒動にも発展しかねません。ただ「相手も自分も納得できるレベル」であれば、値段を上げることのメリットもわかりやすく享受することができます。
商品ラインナップを増やす
典型的な方法としては、高級品と中級品(本命商品)と低価格対象品といった、松竹梅のラインナップを設けることです。この結果、真ん中の商品の成約率が上がりやすくなるので、それを踏まえた上で、それぞれの値段と商品内容を検討していきましょう。
なお、金銭的に余裕がある人や投資意識が高い人は「どうせなら最も高い価値を受け取りたい」という心理から高級品に魅力を感じやすかったりもするので、やはり最高級品の存在は用意しておくといいですね。(高額な商品を見た後に、それよりも価格が低い商品を見ると、よりやすいと感じやすくなる「アンカリング」という心理効果も期待できます)
クロスセルを用意する
クロスセルとは商品のセット販売のことです。
大手ハンバーガーチェーンのセットメニュー(ドリンクやサイドメニュー)などは有名ですが、例えば他にも
- 自動車を購入した人に内装のアップグレードを提案する
- パーソナルジムの会員にサプリメントを提案する
- ライブの入場者にグッズを販売する
などもクロスセルの代表例です。
クロスセルで販売するものに関しては「メイン商品の効用を高める(足りない点を補う)もの」で「メイン商品よりも価格が安いもの」がベターですね。
非購入者向けにダウンセルを用意する
また「何も購入しなかった人」や「リピートしなかった人」に対して、ダウンセル(低価格帯商品)を用意してあげて、見込み客あたりの顧客単価を高めることも重要です。
本命商品以外にも手の届きやすい価格帯の商品を用意して、顧客離れを防ぐことも重視していきましょう。
利益率を高める
利益率の高いビジネスを徹底することで、自ずとLTVも高くなります。
僕が行なっているウェブマーケティングやコンサルティングの業務は、必要経費がとにかく少ないので、売上のほとんどが利益という状況を作ることができています。
できるだけ経費のかからないビジネスをすること、固定費を極力減らすことを心がけていきたいですが、経費削減のために、自分の労力が増えてしまったり効率が悪くなることはNGなので、その辺りはバランスに気をつけていきたいですね。
最後に
「どんなビジネスが良いビジネスか」と聞かれたら、僕は間違いなく「LTVの高いビジネスだ」と答えます。(他にも色々な正解があるにせよ)
LTVの高いビジネスの仕組みができたら、あとはその仕組みの中にどんどん集客をしていくだけです。
そのためにも、どんなビジネスをやっているにしても、特に小さな規模感でビジネスを実践している場合はLTVの高い仕組みづくりに注力していきましょう。